ジムに行かない理由は、行きたくない気持ちのあとからやって来る
意志の弱さの問題ではない
先延ばしは、意志が弱いから起きるのではありません。やりたくない気分に理由が一瞬で付いてくるのに、その瞬間に気づけないから起きます。
先延ばし癖の直し方の話です。ただし、よくある方法の話ではありません。 全部知っているのに、なぜいざという瞬間にはひとつも思い出せないのか。まずはそこからお話しします。
ジムに行くと決めた日
ジムに行くと決めた日でも、着替える直前に、行かない理由が一度に5つ浮かぶことがあります。どれも本当のことなので、言い返しようがありません。
カバンまで用意してあります。なのに着替える直前、頭の中に言葉が浮かんできます。
- 昨日行ったし、今日は休養日ってことで
- 今週もう2回も行ってるし
- 今日暑すぎ。明日にしよう
- 夜に予定あるから、時間が中途半端なんだよな
- 今の時間は混んでるし、明日の朝イチで行けばいいか
前もって計画している人はいません。座って、今日はどう逃げようかと考えたわけでもありません。その場で、ふっと浮かんでくるだけです。
行かない理由は、どれも筋が通っています。昨日運動したのは本当です。暑いのも本当です。予定があるのも本当です。嘘ではないので言い返せません。だから、そのまま流してしまいます。

順番が逆になっている
先延ばしは、理由を考えてから決めるのではなく、「気分 → 理由 → 決定」の順番で進みます。やりたくない気分が先に来て、理由はあとから付いてきます。
先延ばしは、一度に起きるわけではありません。頭の中で3つの段階に分かれて進みます。
ステップ1. 気分が先に来る。 やりたくない気分が先に届きます。ステップ1の時点では、まだ理由がありません。ただ体がだるくて、気が乗らないだけです。
ステップ2. その気分に合う理由を後付けする。 すべてが決まるのはステップ2です。理由を検討して結論が出たのではありません。結論が先にあって、理由があとから付いてくるのです。 だから浮かぶ理由は、全部同じ方向を向いています。行く理由はひとつも浮かばず、行かない理由だけが5つ浮かびます。判断だったなら、両方浮かんでいたはずです。
ステップ3. 理由をもとに決める。 しかも、決めたという感覚がありません。合理的な判断に思えます。 あきらめた気分ではありません。今日は休むのが正解だと整理がついた気分で、ソファに座ります。
行かない理由があるから行かないのではありません。行きたくないから理由が生まれたのです。 順番が逆なのに、その順番が見えません。

やり方を知らないからではない
先延ばしをやめる方法はよく知られていますが、どれも「今まさに先延ばししようとしている瞬間だ」と分かっていて初めて使えます。理由が後付けされる数秒はあっという間で、その瞬間を逃してしまいます。
先延ばしをやめる方法は、もう出尽くしています。
まず5分だけやってみる。やることを細かく分ける。環境を変える。迷った瞬間、数秒以内にとにかく動く。 どれも正しく、実際にうまくいった人もたくさんいます。
でも、よく知られた方法には共通の前提があります。今がその瞬間だと分かっていること。
「数秒以内に動け」というアドバイスは、その数秒が始まったと分かっていないと使えません。 「細かく分けろ」というアドバイスは、今が分けるべき場面だと分かっていないと使えません。
問題は、やりたくないと感じるステップ1と、それを理屈で正当化するステップ2が速すぎることです。理由を後付けしている最中は、それが言い訳だと気づけません。ただ自分がそう考えているだけ、という感じがします。 あとになってから、ああ、今日も言い訳して行かなかったな、と思うのです。
知識は、そのタイミングでは役に立ちません。 自己啓発書を100冊読んでも、その一瞬は変わりません。知識が間に合うタイミングではないからです。
気づくと何が変わるのか
その理由に気づいても、やりたくない気分は消えません。変わるのはひとつだけ。理由が事実ではなく、「行きたくないから探した言い訳」に見えるようになります。
気づくことで変わる範囲は、思っているより狭いです。正確に言うと、こうです。
気づいたからといって、急に行きたくなるわけではありません。やりたくない気分はそのまま残ります。消えはしません。
変わるのはひとつだけです。気分も理由も、ただの気分、ただの考えとして見えるようになります。
「今日は暑すぎるし」が天気についての判断ではなく、今行きたくなくて、行かない理由を天気に探しているんだなと見えてきます。 中身は同じなのに、立ち位置が変わります。その中にいた自分が、一歩引いて見る位置に移るのです。実は、これがメタ認知です。
見えれば、自分で選べます。見えなければ選べずに、そのまま流されます。そして結局、行かないのです。
次は玄関を出るところまで — ここでやっと自己啓発書の知恵が効く
言い訳に気づけたら、運動全体ではなく、着替えて玄関を出ることひとつだけを目標にします。「小さく分ける」というアドバイスが本当に効くのは、この場面です。
気づいたら終わり、ではありません。気づいたあとにも、もう一回つまずくポイントがあります。
気づいたあとで「よし、運動しよう」と気合いを入れると、また負けます。 1時間の運動はハードルが高すぎます。運動のことを思い浮かべた瞬間に、また行かない理由を後付けし始めます。
だから狙うのは運動ではありません。着替えて玄関を出ることだけです。 着替えるだけと決めれば、言い訳する余地がありません。着替えるのに、今日が暑いことも夜の予定も関係ないからです。
「小さく分ける」「まず少しだけやる」という、よく知られたコツが効くのはここです。分けた一つめが、着替えて玄関を出ることだけだからです。
そして一度玄関を出てしまえば、その先はずっと楽になります。決意が残っているからではありません。もう動いているからです。
要は、意志の力ではなく順番の問題です。大きなことを決意するのではなく、最初の一歩だけを踏むのです。
気づきは練習で育てる力
気づくことは、決心すればできるものではなく、練習で育てる力です。気づくための練習が、マインドフルネス瞑想です。
まとめると、先延ばしするのは意志が弱いからではありません。 その瞬間、先延ばしする理由が一気に頭を占領し、そのことに気づけないまま引っぱられてしまうからです。
考えに気づくのは、気合いでどうにかなるものではありません。いざその瞬間が来ると、気合いを入れたことすら忘れているからです。 気づきは、練習で育てるしかない力です。
そして、まさにそこを練習する方法があります。マインドフルネス瞑想です。
マインドフルネス瞑想をしていると、必ず別のことを考え始めます。そしてある瞬間、別のことを考えていたと気づいて戻ってきます。 ジムに行く前に必要な動きも、まさにこれです。気づいて、戻る。瞑想は、その動きを静かな場所で繰り返すことです。練習を重ねるほど、気づくのが早くなります。
瞑想は頭の中の考えに気づく練習です。こうした場面も含めて、日々の選び方が変わってくることがあります。 古くさく聞こえるかもしれません。でも、何千年も受け継がれてきたのには理由があります。
私は、このサイトのアプリ「True Meditation」の開発者です。この練習を誰でも手軽にできるように、そのままアプリにしました。
まとめ
ジムに行くようなことを先延ばしするとき、3つの段階が起こります。やりたくない気分が先に来て、その気分に合う理由があとから付き、最後にその理由をもとに決めます。そのため、浮かぶ理由はすべて同じ方向を向いています。判断であれば、ジムに行く理由も一緒に浮かんでいたはずです。行かない理由があるから行かないのではなく、行きたくないから理由が生まれるのです。
自己啓発書で学ぶ先延ばし対策は、どれも「今がその瞬間だ」と分かっていることを前提にしています。ところが、直前に浮かんだ言い訳が、まさにその事実を見えなくしてしまいます。結果として、方法を使うべき瞬間に限って、どの方法も思い出せません。
考えに気づいても、急にやる気が出るわけではありません。ただ、言い訳が事実ではなく浮かんできた考えとして見えるようになり、そう見えれば、従うかどうか選べます。次は、ジムなら運動全体ではなく、着替えて玄関を出ることだけを狙えば十分です。気づくタイミングを早めるための練習が、マインドフルネス瞑想です。
True Meditationは、ガイド音声を聴くアプリではなく、マインドフルネス瞑想を自分で行うためのアプリです。自分の考えに気づく練習をそのままアプリにしたもので、App StoreとGoogle Playで無料で入手できます。
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